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たかが秋刀魚、されど秋刀魚
神戸市灘区、水道筋商店街のとある魚屋。
本日のおかずの材料を買うべく、片手に保冷バッグ、片手に財布を握りしめて突っ立つ私。銀色のステンレスの台には氷が敷き詰められ、その上に明石鯛、明石だこ、さわら、いわし、サバ、鮎、鱧、そして秋刀魚が並んでいる。私が財布を持って突っ立っていたのは、秋刀魚の値段を見たからだ。
「1尾500円」
取り立ててなんの変哲もない秋刀魚である。厚岸産とかブランドものではなさそう。
魚屋さんの奥さんも特に話しかけるわけでもなく、漫然と立っている。
「あのぅ」
私は絞り出すように言った。
「鮎ください」
「まいど」
結局私は1尾150円の鮎を買い、帰って塩焼きにして蓼酢で食べた。
美味なり。
にしても今年は早いうちから秋刀魚が獲れない獲れないと騒いでいただけあって、高いなぁ。このままだと土用の丑の秋バージョンには秋刀魚を食べるのが流行るなんてことにもなりそう。
しかしこんなに獲れないのは、きっと外国が乱獲しているからに違いない。このままだと日本で魚が食べられなくなる!
そう思って調べると、やはり出てくる出てくる。
例えばJIJI.COM.2020年1月7日の記事。
https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_eco_nourinsuisan20200107j-02-w410
「日本の近年のサンマの水揚げ量は年間10万トン前後で推移。19年はピーク時1958年(約58万トン)の10分の1以下に落ち込んだ。水揚げ低迷は、回遊するサンマが日本の東側の公海から排他的経済水域(EEZ)の漁場にたどり着く前に、中国と台湾の大型漁船が「先取り」していることが原因の一つとされる。」
しかしこの記事、その根拠が全く示されていないし、記事を書いた人の名前もない。
他には温暖化が原因なんていう、これまた明確な根拠が示されない記事が続く。
そしてやはり書いた人の名前がない。
色々調べてやっと「Gyoppy!」
というサイトにたどり着く。
海の豊かさを守る、という目的で作られた、Yahoo!が運営しているサイトのようだ。
このサイトに「サンマが獲れないのは中国のせいじゃない?メディアが伝えない不漁の真実」という記事があった。
https://gyoppy.yahoo.co.jp/originals/37.html
これによると、秋刀魚はそもそも日本の魚ではないそうな。なんとハワイの北あたりに住んでいるという!卵を産むために秋頃に南下し、その群れの一部が日本の側を通るので日本では秋にしか秋刀魚が獲れないらしい。
したがって、その時期はずれたりもするし、9月にあまり獲れなくても10月には獲れるし、そもそも毎年同じ漁獲高ではないということである。
そう考えると、秋刀魚は決して日本のモノではなくて、たまたま通りかかった産卵期の秋刀魚をガンガン獲りまくってきた結果、満足に卵が産めずに、秋刀魚が減っているのかもしれない。
詳しくは上記のURLで記事を読んでいただきたいのだが、秋刀魚の漁獲量の減少は外国の乱獲でないことがよく分かる。
そして、「外国の乱獲」というキーワードを使うことによって「犯人」を作り上げ、世論を誘導し、本来なら国際的な話し合い、協定などを作って、共有の資源を守る、ということをしない政府の怠慢を隠しているのだ。
閑話休題。
小津安二郎の映画に「秋刀魚の味」という作品があるが、なんとこの作品には一切秋刀魚が出てこない。出てくるのはトリスウイスキーとかサッポロの赤星とか、お酒ばかり。昔は映画の中でCMを流していたくらいだから、スポンサーなのだろうけれども、一体なぜ「秋刀魚の味」などという名前をつけたのかは不明である。ただ、そのタイトルを聞いただけで、「ああ、日本人の味だね」と勝手に思ってしまう。それほど秋と言えば秋刀魚なのであり、市井の人たちに親しまれてきたのだ。
やはり失いたくない文化だ。
ぜひ小手先の世論誘導なんかやっていないで、国際的な協定作りという地道なことをやってもらいたいものです。美しい日本のために。
文責:Y
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