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What is our struggle?

MOVIE

ゆきゆきて神軍

1983 | 122 min | Colour

原一男

ーあらすじー

 神戸でバッテリー店を営む奥崎謙三(66)は、戦後40年経ってなお国家・社会に戦争責任を追及するべく、アナーキストとして活動していた。 

 彼は第二次世界大戦時、独立工兵第36連隊に配属され、ニューギニア戦線に送られていた。工兵隊とは、戦闘前の陣地の建設から歩兵の支援、地雷の撤去まで、戦闘のための準備部隊のこと。ニューギニア戦線は最も過酷な戦地の一つで、部隊1300名のうち生き残ったのはわずか100名だった。

 当時軍内部で行われた隊員の処刑と、兵隊同士の食人事件の疑惑の真相を解明するため、奥崎はゲリラ的に当時処刑に関わったと思われる人物の家に押しかけ、証言を引き出そうとした。やがて衝撃の事実が次々と明るみなっていき、奥崎はかつての上官を殺す決意をするのだった・・・

☆☆☆

 この映画を初めて観た時、正直、「怖い」と思った。

 まずこの奥崎謙三氏の顔が怖かった。

 ほとんど感情の動きを示さない黒い、動物みたいな目。劇中自分でも語っているが、1956年に不動産会社の人間と口論になって相手を刺殺して10年服役している。

 人を殺したことのある人間の目というのはこういう目なのか。

 さらに語っていることがまともなのか、まともじゃないのか、時々自分の罪を自責の念を持って語るかと思えば、“靖国”という言葉を聞いただけで激昂し、目の前の人間をタコ殴りにする・・・

 考えてみれば、奥崎謙三というこのエキセントリックな存在がなければ、このドキュメンタリーはそもそも成り立たなかったであろうが、受け入れるにはそれなりの覚悟がいるだろう。

 戦後40年経って、当時の関係者はみな一様に歳をとり、田舎で平和に暮らしていた。そんなところに突然奥崎とカメラが乗り込んできて、「おまえがやってきた事を正直に言え!」と迫るのである。

 奥崎は言う。

 「あなたが、あの悲惨な戦争で体験したことを語らなければ、いずれ人は忘れて、また同じことを繰り返す。あなたが本当のことを語ることが、戦争の無い世界を作るんだ」

 怒鳴られて小さくなっているのは自分の祖父のような年齢の人たちだった。もういいじゃないか。自分の祖母も戦争の時のことは話さなかった。みんな辛い思いをしすぎて、早く忘れてしまいたいのだ。そこに見ず知らずの人間が乗り込んできて傷口に塩を塗る。正直腹立たしかった。

 しかし結局の所、奥崎が言ったことは本当だった。

 いつの間にか人々は忘れてしまった。まるでそれは泥水のように年月をかけて沈殿し、今では何事もなかったかのような透明さでそこにある。でもそれは腐った水だ。何かの拍子に石を放り込めば、たちまちまた濁った泥水になる。

 この8月、全国でリバイバル上映されていたが、今こそ見るべき映画なのではないだろうか。

文責;Y



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