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MOVIE

メイド・イン・バングラディッシュ

2019年製作(2022年公開)

監督:ルバイヤット・ホセイン

☆☆☆

あらすじ

世界の大手アパレルブランドの縫製工場が集まるバングラディッシュの首都ダッカ。工場で働くシム(リキタ・ナンディニ・シム)は、厳しい労働環境にあえぐ同僚たちと労働組合を結成すべく立ち上がる。工場幹部からの脅し、夫や仲間からの反対に遭いながらも、労働法を学び奮闘するのだが…。

☆☆☆

今年の秋冬商品の一部値上げをユニクロが発表し、話題となっている。フリースなどは1000円の値上げということで、庶民にとってはなかなか痛い話である。

食品や燃料などの値上げが相次ぐ中、衣料品などの生活必需品も今後値上がりする模様だ。

コロナショック、ウクライナショック、さらに円安ショックと、よく考えてみればとんでもない事態なのかもしれない。

ユニクロは日本の企業(資本の比率は別として)だが、円安や輸送コストが影響するのは、ユニクロの服が海外で作られているからだ。縫製工場のほとんどは中国だったが、昨今はバングラディッシュ、ベトナムも上位を占めている。人件費の安い国で作って日本に持ち込み、安く売る。

ザ・資本主義システムだ。

この安い人件費を巡って世界中のアパレルメーカーがバングラディッシュやカンボジアに次々と縫製の拠点を置いた。内戦でガタガタになった国家ではそもそも労働法などという概念も無く、慢性的な貧困にあえぎ、古い因習や男女差別など、問題の多い地域だ。しかし企業にとってはそんなことはどうでもいいわけで、労働者の安全や、待遇などに配慮することは無かった。

その結果、2013年に悲劇が起こった。

「ラナ・プラザ崩落事故」である。

バングラディッシュの首都ダッカ近郊にある複合ビルが崩落し、1127人が死亡、行方不明者500人、負傷者2500人の大惨事となった。このビルには27のファッションブランドの縫製工場が入っていて、事故の前日にはひび割れが確認されたにもかかわらず、労働者の避難を許さず、事故に至った。

これに対してブランド側は状況を把握していなかったと主張。劣悪な労働環境、ビルのずさんな安全管理を現地の工場とビル所有者に押し付けた。

☆☆☆

映画「メイド・イン・バングラディッシュ」の冒頭に出てくる縫製工場の火災事故という設定は、この「ラナ・プラザ崩落事故」をモデルにしている。

2013年の事故後、ファッション業界は自ら工場と建物の安全に関する協定を作成し、多くの企業が署名した。他にもバングラディッシュ労働者安全連合なども発足したが、どちらも期限を迎え、役割を終えたことになっている。

そして2019年にこの映画が作られた。

映画を見る限り、どこか状況が良くなったようには見受けられない。相変わらず低賃金、劣悪な環境で労働者は働かされているように見受けられた。人々は日々の暮らしで精いっぱいで、女たちは男たちの暴力に怯え、わずかな収入が断たれることを恐れて工場長にはなんの抵抗も示さない。

それを断ち切るために一人の女性が立ち上がる、というストーリーなのだが、もうそこに至るまでの過程が酷すぎて、正直見ている方も打ちひしがれ、疲れ果ててしまう。

一体全体、どうしてこんなに世界を変えるのは大変なのか、と。

☆☆☆

私自身、数年前に洋服作りを学んだ経験がある。趣味程度ではなくて、何もない所からパターン(図面)を起こし、裁断し、仮縫いし、そして縫製する過程を学んだ。

モノ作りは好きな方だけれど、服作りはとても難しかった。とにかく手間がかかる。そして慣れなければ時間もかかる。熟練の職人が勘でこなせる事をいちいち測ったり、図面を見なければならないということもあるだろうが、ワンピース1着作るのもかなり時間と手間がかかる。

だから、服作りを学んだ後ではユニクロの服が「神」のように思われた。1980円でこのパンツができるなんて…と。

そして、自分で服を作るのはとても非効率的なことのように思われた。だって買った方が早いもんね。

というわけで、ファスト・ファッションにすっかりお世話になる人生を送っていたのであるが…。

本当は分かっていたはずなのだ。そんなに安くできるわけないのだ、と。

地球上で、誰かが豊かな生活をしている時、その裏側で誰かが貧困で苦しんでいる。私がユニクロやH&Mの服を安くて可愛いと思って気軽に着ている時、1日十何時間も働いて1カ月その服2枚分くらいの賃金しか貰えていない女性たちがいるということに思いを馳せなければいけない。

昨今流行りのSDGsはそういうことを考えさせるためのものであるはずだ。でも、こんなことどこの企業もCMで言ったりしてないですよね?このTシャツはバングラディッシュで1日80円の賃金で働いてもらって作られています、とか、工場では労働環境が整っていませんが、みんなに文句を言わせず働かせています、とか。

おそらく、企業側が考えるSDGsというのは、古着を集めてそれをリユースすると言ってアフリカに送りつけたり、ジェンダーに配慮した商品開発(どこかにレインボー色を付ける)をしたり、環境のためと言ってビニル袋の代わりにエコバッグを販売したりすることなのだろう。

こういう話をすると、「お前は着なければいいじゃないか」と罵られることになるのであるが、それは中国人を罵りながらiPhoneを使っていたり、原発は安全だと叫びながら原発から遠い都心に住んだりするのと同じことで、みんな避けられぬことだ。同じ船の上でそれを罵り合ったところでどうなるのか?ただただ船が沈むだけである。

冒頭でも書いた通り、日本は他の国に比べても危機的状況なのかもしれない。このまま賃金も上がらず、円安が進めば、日本は再び発展途上国レベルの賃金で働くことになる。でも日本には、憲法で保障された人権があり、バングラディッシュや他の途上国のような無茶苦茶な労働条件は認められていない。しかし、昨今、この人権という概念を取り払おうとする動きがある。

「憲法改正論議」だ。

なにも9条だけ変えようとしているわけではない。実は、この基本的人権をすっぽり奪おうとしているのが自民党の憲法草案であることを知るべきだろう(なんと選挙が終わってから新草案を提出するらしいのだが、前回発表したものがあるのでこの記事で確認をhttps://news.yahoo.co.jp/feature/386/)。

気温がぐんぐん上昇するこの季節だが、背筋に冷たいモノをかんじないだろうか?

参議院議員通常選挙は7月10日(日)に行われる。

文責:矢向由樹子

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