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Mid90s - grunge house records

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MOVIE

Mid90s

2018 | 85 min | Colour

Jonah Hill

あらすじ

1990年代半ばのロサンゼルス。13歳のスティーヴィーは兄のイアン、母のダブニーと暮らしている。5つ離れた兄に憧れていたが、近付こうとするたびに小柄なスティーヴィーは殴られ、罵倒され、いつか見返してやると考えるようになっていた。ある日街のスケートボード・ショップに立ち寄ったスティーヴィーは、そこでたむろする少年たちと出会い、やがて仲間にいれてもらうようになる。自由でとびきりスケートボードの上手い少年たちと過ごす日々。あまりにも心がはやり、彼らに近付き過ぎたスティーヴィーに待ち受けていたのは・・・

☆☆☆

2018年の段階で90年代半ばを振り返る、その名も『mid90s』なんていうタイトルの映画を撮るなんて、勇気がいる行為に思える。個人的な感想だけれど。時代の連続性の中、劇的な構造変換みたいなものがない現代で、ある種の時代を形容するのはとても難しい。

90年代ピープルとしては、「kids」とか「トレインスポッティング」という90年代カルチャー金字塔みたいな映画があって、多くの人がそこから派生するカルチャーにどっぷりはまってきたわけだ。

その中の一つが恋愛だったり、スケートボードであったり、ヒップ・ホップであったり、ドラッグであったり(これをカルチャーと呼べるかどうかは別として)、トランス・ミュージックであったり・・・

「mid90s」でフォーカスされているのはスケートボーダーの世界。音楽はパンクからミクスチャー、ヒップ・ホップ、グランジまでオールマイティにカヴァーしている印象だ。

ストーリーも単純で、子どもから大人に成長する過程で味わう孤独や、葛藤、憧れや、挫折。それらが散りばめられて、スケートボードに乗せて展開される。

これを甘いとみるか、美しいと見るか、あるいはこんなの全然90年代じゃないと見るか、、、色々だろう。一つ言えるのは、監督の「慈愛」みたいなものをこの映画に感じることができるということだろう。

過ぎ去った日々に対する慈しみ。若いということへの慈しみ。成長するということへの慈しみ。

だから、出てくる少年たちもまた真摯で、硬派。

劇中、夕暮れのロサンゼルスの街中を少年たちがスケートボードで駆け抜けるシーンで流れるママス&パパスの「Dedicated to the one I love」は、ボードへ自分の人生の全てを捧げる少年たちの姿をそのまま表現したものだ。

一方「kids」は違った。

都会にあってお金もなくやるべきものも見つからない。手足をもがれた状態で何に自分を捧げればいいのか分からないもどかしさ。破壊したい衝動。あてのない欲望を切り取っていた。それらに共感できたし、そこに自分を重ねた人も多かったと思う。

どちらも十代の自分。

だから「mid90s」の温かい視線は今の自分の視線でもあると思う。

☆☆☆

私にとってのmid90s、すなわち1995年は、阪神淡路大震災で幕を開けた。

当時阪神間に住んでいたので、被害のど真ん中にいた私は、いきなり混乱の中に放り込まれ、訳の分からないまま日々を過ごすはめになった。それに続いて3月には地下鉄オウムサリン事件があり、私の周りはまだがれきの山の中で生活しているのに、すっかり世間からは忘れ去られ、自分たちの不自由な生活だけが取り残されていた。

考えてみれば、その当時いつも死と隣り合わせで生きていたような気がする。震災後間もなく風の便りで同級生の女の子が自殺したのを聞いた。娘と孫を一度に失い、どうして自分だけが生き残ってしまったのかと、苦しむ人もいた。

でもそれが日常になると、もう何も感じなかった。自分もいつ死んでもいいや、それぐらいの感情だった。

避難した樋之池体育館の半分が死体で占められていた横で、震えながら夜を明かした時も、それは生の延長線上だった。

だから、10代を描いた映画は、いつもどこか生への執着がない。

無謀なことをして、ラッキーな子は助かるし、慎重に生きているような子が突然死んでしまったり。

大人になると、「なんて馬鹿な事を」と天を仰ぐような事も、10代の子たちにとっては何でもない事なのだ。

この感覚を非難したり、あるいは憐れんだりする必要はあるのだろうか。

自分たちもそこを通過して、音楽に夢中になったり、恋愛したりしてきたというのに。

映画が終わり、館内が明るくなると、後ろを陣取っていた高校生の5人組の一人がスケートボードを取り落とし、「Fu〇k!」と叫ぶ。吹き出しそうになるのをこらえながら、立ち上がる私。この若い人たちにとってはきっともうこの映画が「マイ・ストーリー」になっているのだね。

文責:Y

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