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機関銃とバンドエイドとジョン・レノン - grunge house records

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機関銃とバンドエイドとジョン・レノン

困った時の神頼みならぬ、困った時の「イマジン」頼み。

SNSだろうが、TVコマーシャルだろうが、はたまたワイドショーの特集のBGMだろうが、「イマジン」を至る所で耳にする。

とりわけ記憶に新しいのは東京オリンピックの開会式。夜空に1800台のドローンが巨大な市松模様のエンブレムを描いた後、それが地球に変わり、場内には「イマジン」が流れ、選手たちが肩寄せあう、という演出。

オリンピック=平和の祭典=イマジン、という、まぁ、なんというか、インスタントな印象を持ってしまう。

「イマジン」といえば、2001年の9.11同時多発テロの時、アメリカのラジオ局で放送自粛となったという事実がある。これまで自国の領土を攻撃されたことがなかった(ネイティブの方以外)アメリカ人にとって、テロリストが飛行機で突っ込んでくるというのはよほど衝撃だったのだろう。

人々はパニックになり、首謀者と言われたオサマ・ビンラディンへの復讐を誓い、タリバン政権殲滅目指してアフガニスタン侵攻を決めた。

そんな戦闘ムード溢れる中、戦意を消失させるような「イマジン」が流れては困るというのが政府、そしてそれに追従したマスコミの言い分である。

2001年10月、ジョージ・W・ブッシュはアフガニスタンにビンラディンの身柄引き渡しを要求。政権を担っていたタリバン側は、9.11テロがビンラディンらによるものであるという証拠の提示を求めたが、アメリカは証拠の提示を拒否。「不朽の自由作戦」と称してテロリスト掃討作戦を実行した。そしてこのアフガニスタン侵攻が、今年2021年8月、ぶざまなアメリカ軍撤退という形でようやく終わりとなった。

アメリカはタリバン政権の掃討、民主的な政権の樹立を目指して20年あまりもアフガニスタンに居座り続けたにも関わらず、米軍が去った今、再びタリバン政権が樹立され、市民の支持を集めているようである。

ハッキリ言って、何をしていたのかね?と問いたくなる有様だ。その間、とんでもない軍事費が費やされ、多くの死者(タリバン、民間人合わせると8万人以上、アメリカ兵も3000人以上)を出し、国土はぼろぼろになった。

さらに2003年には「9.11テロの背後にはイラクがいる」「イラクには大量破壊兵器がある」という情報をアメリカは発表。しかしフランスやロシアその他の国々もそんな事実はない、と国連で承認を拒否する構えを見せると、アメリカは英国と単独で軍事行動に移り、国連決議を得ないままイラクに侵攻した。そして同年12月、サダム・フセインを逮捕。2年後の2006年12月30日、「人道に対する罪」で死刑が執行された。

かつてアメリカと同盟を組んでイラン・イラク戦争を戦い、国民から神のように崇められ恐れられた中東の英雄は、自分で洗濯した粗末な衣服に身を包み、ぼろきれのような姿で首を吊られて死んだ。

時は流れ、2011年5月2日、9.11テロの首謀者だったビンラディンがアメリカ海軍特殊部隊によって殺されたというニュースが流れた。場所はパキスタン。イラクではなかった。なんとサダム・フセイン政権は9.11テロの背後にいるどころか、ビンラディンをかくまってすらいなかったのだ。

これにてイラク戦争は終結。この戦争の死者数は諸説あって明確な数字は提示されていないが、戦闘員だけで2万~3万人、非戦闘員は10万~11万人と言われている。

2008年、ブッシュが退任する頃には「大量破壊兵器は無かった」ことが公の事実となり、ブッシュは「私の任期中の最大の後悔は、イラクに関する情報がニセモノだったことだ」とABCテレビのインタビューに答えた。

つまり、「ガセネタのせいですっかり騙されたけど反省してるっす」と言ってのけたのである。

その後イラクはイスラム教のシーア派スンニ派クルド人の対立という血みどろの内戦が始まるのだが、民主党のオバマは米軍撤退を宣言。ますます内戦は激化していった。そうして生まれたのがISであり、シリアの泥沼の内戦にも直結していくのである。

これが2001年9.11テロ後から2021年8月の米軍アフガニスタン撤退までの大まかな流れだ。

この間に世界はITバブルを迎えたり、リーマン・ショックだ、なんだと言いながら、順調に経済発展を遂げていった。そしてISが現れてジャーナリストが人質になるとイスラム教徒たちを嫌悪し、シリアやリビアにほんの少しの人道支援を送っては、中東の混乱の酷さを嘆くような記事を垂れ流した。

私は、いつもこういう世界の記事、とりわけアメリカの「自由」を掲げた戦争や内政干渉の記事を見るたびに、映画「地獄の黙示録」のセリフを思い出すのである。

「これがここでの我々のやり方だった。マシンガンで撃ちまくって、バンドエイドを手渡す。…欺瞞だ。見れば見るほど吐き気がする。」

有名なウィラード大尉のセリフ。

そこで、あの「イマジン」がどうしてラジオで流れなくなったのか、ものすごく深い深い意味が浮き彫りになってくる。世界に国境が無くなったら、誰が困るのか、この欺瞞に満ちた世界がいかに馬鹿げているか、ストレートに伝わってくるのである。これはきっと、誰にも成し遂げられない、ジョン・レノンという天才の成せる業なのだろう。

というわけで、心の底から世界の平和を祈りつつ、ジョン・レノンを偲びたい。

2021.12.08



文責:矢向由樹子

“機関銃とバンドエイドとジョン・レノン” への2件のフィードバック

  1. Leonard Fujita より:

    ええこと言う

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