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DROP BASS NOT BOMBS
ーProtest Raveー
東京からの帰り、ふと前を見ると女の子同士のカップルが、しっかりと手を繋いで眠りこけていた。一人はウルフカットに緩いパーマをかけ、ゆったりとしたパンツにロックTを着て、もう一人の女の子は白いふわふわしたセーターにグレーのショートパンツ姿。二人ともとてもお洒落でお似合いだった。
2026年3月29日の阪急神戸線の終電の光景だった。
私はその日新宿で行われた反レイシスト、反ファシズムを表明する抗議活動に参加するために東京を訪れていた。
新宿の東南口広場をRAVE会場にして、旗を振り、思い思いのプラカードを掲げ、音楽とともに踊るというものだった。

16時にはすでに人がたくさん集まり、PAも準備完了。大きなケヤキの木にはプロテストメッセージが添えられたカードで装飾が施され、駅に背を向けてダンスフロア・スペースが設けられていた。
DJ Mars89がオープニングを務め、まだ明るい昼の陽ざしが残る会場を温めていく。ダンスフロア仕様の裏では「戦争反対」「高市辞めろ」「トランプ辞めろ」「9条守れ」などのシュプレヒコールが飛び交い、音の合間にまるで合いの手のように重なっていく。
時間が経つにつれ、行楽で出かけていた人が帰る際に立ち寄ったり、旅行で訪れている人が好奇の目でスマホを向けたり、とその数がどんどん膨れ上がっていった。普段なら足を止めないような人も集まり、そしてすぐに立ち去る人も少ない印象だ。スモークが焚かれ、遠目にも異様な雰囲気の中、老いも若きも、男も女も、同性愛者も、外国人も、障害がある人も、みんな腹に響く重低音(Bass)のリズムに合わせていた。

「どうせ活動家でしょ」「共産党?」「プロ市民」(謎?)そういう人がいたら、ぜひこのProtest Raveに参加する事をおすすめする。そんな既存の団体では成しえない空間がそこにはあるから。
これまでいろんなデモや集会に参加してきたけれど、日常の延長のような今回の空間は初めてだ。
DJイベント、パーティー、フェス、その雰囲気とプロテストがぴったり合って、全く不自然ではなかった背景には、「今回はさすがに…」という差し迫った緊張感がある。
2月末にアメリカとイスラエルがイランを攻撃したことによって、日本に石油が入ってこなくなるという事実。政府は備蓄を放出するから大丈夫と躍起になって叫んでいるものの、企業の動きを見ているとそんなことは大嘘で、4月の末には世界ががらりと変わっているかもしれない。大好きなマクドナルドも、パーティーも、煙草も、酒も、使い心地のいいシャンプーも、かわいいコスメも、推し活のグッズも無くなるかもしれない。テレビでは言わないけれど、物が無くなるかわりに、戦争できる国にしてあげよう、と高市政権は言っているのだ。
この差し迫った危機に、人々が声を上げだしたとて不思議ではない。
確かに、これまでは自分とは関係なかった。SNS上で左翼と右翼が好き勝手な事を言っていた。ウクライナでは若者が犠牲になり続け、パレスチナでは子どもたちが犠牲になり続けているが、どこか遠い国の話だった。でも、今度は、身近に危機がやって来たのだ。
今後、どのような動きを政府が見せるのかは分からない。イランとの個別交渉を拒んでいる間に、アジアの各国は個別交渉を終えて、ホルムズ海峡を通過し、自国に石油を持ち帰っている。日本は頑なに対米追従姿勢を崩さず、う回路を模索中。ホルムズ海峡に自衛隊を派遣するための特措法を強行採決するなんていう話も出てきた。
12年前の2014年7月1日、当時の安倍政権下で成立した「集団的自衛権の行使容認」によると、同盟国が攻撃を受けた場合、同盟国を助けるという目的で派遣要請できるとのことだったが、イランを攻撃しているのはアメリカだ。
おまけに、いつからこの世界は裁判もせずに人を殺すことができるようになったのだろう?イランの最高指導者ハメネイを殺す権利がトランプになぜあるのだろう?

アメリカでは3月28日、「ノー・キングス(王はいらない)」をスローガンに、全米3000か所以上で大規模な反トランプデモが行われ、主催者によると最大推計800万人以上が参加したとのこと。強硬な移民摘発やイラン攻撃への市民の怒りが結集した形だ。そしてアメリカの人たちにも危機が迫っている。地上戦が行われれば、確実にアメリカの若い人たちが死ぬ。石油の値段が上がれば物価高で苦しむ人が出る。インサイダー取引で大儲けした奴がいる中、我が子を戦争に行かせたくない、と言っただけで殴られ、拘束された母親がいる。もはや無茶苦茶な様相を呈してきたアメリカで、今回のデモは、しごく真っ当なアメリカを見た気がして、安堵した。
今現在、日本はまだ落ち着いていて、石油がどうなるかも分からず、トランプは相変わらず毎日言っていることを変えているが、一つ言えるのは、政治と生活は表裏一体だということだ。今日も原油の値段は上がり続けている。戦争が一番の解決手段?あり得ないだろう。
Protest Raveからまだ興奮冷めやらぬ思いで帰路についた私は、手を握り締めて眠る二人の若い女性たちを見ながら、平和ってこういう事だよな、と独り言ちた。
文責:矢向由樹子
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